宇宙からやってくる素粒子を観測できるようになって約80年あまり。
超新星からやってきたニュートリノを観測してから約30年。
重力波が検出されてから数年。
それまで、理論でしかなかった宇宙の出来事が、徐々に観測できるようになってきました。
観測をすることができるようなったとはいえ、まだまだ分からないことが多いのも事実です。
観測されるたびに、新しい発見が出てくる分野の一つでもあります。
宇宙の素粒子に関する勉強がしたいと思ったときに一番困るのが、教科書や参考書がほとんど見当たらないということです。
最新の研究は、まだ確立されていないことが多く、定説ができていないことが多く、教科書としてまとめるのが難しいという点や、商業的な採算が難しいという理由でなかなか書籍化されないという現実があります。
そのため、多くのことを論文で学ぶ必要がでてきます。
定説が定まっていない分野は、院試などの問題としては、出題しにくいものです。
けれども、大学院で宇宙素粒子物理学の研究を行いたいと考えたときには、研究計画書に書く必要があるので、その分野の下地が必要になってきます。
そんなとき、書籍がないと情報を集めるのが不便です。
しかし、宇宙素粒子物理学の分野で、全く書籍がないというわけではありません。
ここでは、数少ない宇宙素粒子物理学の分野の書籍について紹介します。
ニュートリノに関するわかりやすい一般書
2015年にノーベル物理学賞を受賞した著者が書いた書籍です。
初学者でもできるだけ理解ができるよう、ニュートリノの概念が必要になった理由などの説明を行っています。
ただ、紙面の都合からか、かいつまんだ形になってしまっているため、この書籍だけで理解しようとするのは少し厳しいです。
それでも、ニュートリノのことに関してよくまとまっています。
内容を理解するよりも、ニュートリノからこんなことが分かったんだという感じで読むといいかと思います。
目次
- ミクロの世界に分け入る
- 素粒子の三つの世代
- 宇宙線とニュートリノ
- 太陽で作られるニュートリノ
- 超新星爆発とニュートリノ
- ニュートリノ質量の発見
- 宇宙線生成の謎に迫る
- 太陽ニュートリノ問題の解決
- 地球ニュートリノの観測
- ニュートリノと素粒子と宇宙
- これからのニュートリノ研究
宇宙素粒子物理学を本格的に研究したい人の入門書
宇宙素粒子物理学は、日本人がノーベル物理学賞を受賞していることから、一般書は何冊か出回っています。
ただ、本格的に勉強したいと思ったときに、書籍がなく、そこで止まってしまうという問題に当たります。
そんな中、2000年にドイツで宇宙素粒子物理学の教科書がシュプリンガーから発売されました。
上記の「宇宙素粒子物理学」はその日本語版です。
日本語版の前に英語版も出版されているのですが、日本語版の方が原著にある科学的な風刺漫画も掲載されていますし、なにより翻訳者が問題と解答をチェックし、さらに日本語版を出版するに当たって、ドイツ語版が出版された後に分かったことなどを追加しております。
この書籍については、日本語版をおすすめします。
宇宙素粒子物理学の研究をするための入門書という位置づけなので、前提知識として、大学学部で学習する電磁気学、量子力学や素粒子物理学などの大学学部で学習する物理について知っていると、より理解が進むことでしょう。
なお、旧版として 2009年に発売された同名の「宇宙素粒子物理学」と上記の書籍は、出版元が変わったのみで、中身は変わりません。
(シュプリンガー・ジャパンが和書の出版事業から撤退し、丸善出版に変わったため)
ただし、出版から10年以上たちますので、今となってはやや古い記述が見られます。
最新の情報は論文等で追い、基本的な内容については教科書や参考書で学習するというスタイルで情報の修正を行うことで、対処します。
目次
- 歴史的展望によりまえがき
- 素粒子の標準模型
- 運動学と断面積
- 素粒子物理と放射線検出
- 加速機構
- 一次宇宙線
- 二次宇宙線
- 宇宙論
- 初期宇宙
- ビッグバン元素合成(BBN)
- 宇宙マイクロ波背景(CMB)
- インフレーション
- 暗黒物質
- 宇宙生命学
- 今後の見通し
- 用語集
- 解答