線形代数の参考書。学習するテキストの順番が大切!

線形代数(テキストによっては「線型代数」、「行列」と書いている場合もあります。)の参考書は、たくさん出版されています。

自分の好みで参考書を選ぶのが一番なのですが、たくさん出版されていると、その参考書の前提としている内容がまちまちです。

初めて学習する君が、一度線形代数を学習していることが前提になっている参考書を読んでも非効率です。

反対に線型代数をもっと深く学習したい君が入門書を読んでもミスマッチです。

ここでは、レベル別の線形代数の参考書を紹介します。

線形代数は物理系の必須科目

線形代数は、大学に入って最初のほうに学習する内容です。

大学によっては、線形代数ではなく、行列やベクトル解析の講義の中で線形代数の内容を学習するかもしれません。

いずれにせよ、線形代数は後の物理で使う数学では必ず使います。

相対性理論など大学の専門課程の後半で使うばかりでなく、比較的早く学習する力学の項目でも座標変換や座標軸を回転させるときにもでてきます。

そのため、後の講義で単位を取るだけでなく、院試でも使うことがありますので、マスターすべき科目の一つなのです。

線形代数のテキストは難しい?!

線形代数は多くの学科で学習する科目ですので、テキストも古くからたくさん出版されています。

しかし、2015年4月から状況が変わりました。

実は高校数学の学習指導要領が改訂され、それまで学習していた行列を高校では学習しなくなってしまったのです。

2015年4月から、高校で行列を学習しない学生が大学生として入学したのです。

(次期の学習指導要領では行列が復活するようですが、当分の間は高校で行列を学習しないことになります。)

 

それまでに出版されているテキストは、行列を高校で学習していることが前提で書かれています。

そのため、線形代数のテキストや他の科目で使われている行列の記述は、行列がわかっているものとして書かれています。

そのため、行列を学習していない学生が、高校で行列を学習していることを前提にして書かれたテキストを読んでも、難しいと感じるのは当然の話なのです。

しかも、名著と呼ばれるテキストほど、高校で行列を学習しているものとして話を進めていきますので、おすすめのテキストほど、難しいと感じてしまうのは当然の話なのです。

 

そのため、学習するテキストの順番を間違えると、わからないままになってしまいます。

行列などは数学以外の分野でも非常によく使われているので、消化不良の状態で先に進むと、後の講義がつらくなってしまいます。

 

ここでは、行列を学習するためのテキストから線形代数で学んでほしい内容が掲載されているテキストまでを紹介します。

おすすめのテキスト

行列の基本を学ぶための基本的なテキスト

新しい概念を学習するときには、何事もステップがあります。

大学数学は一般化するところまで学習するのが基本ですが、その前のステップで具体的な例に慣れてから一般化すると、よりイメージがしやすくなります。

目次

 

  1. 連立1次方程式と行列
  2. 連立1次方程式と行列式
  3. 行列の演算
  4. ベクトル空間
  5. 線形写像と行列

 

となっていますが、3次まで行列・行列式を用いて解説しています。

さらに適度に演習問題がついている点がポイントです。

3次までの行列・行列式で演習をして、考え方や計算になれることにより、一般化した行列や行列式にも対応できる基礎学力をつけるにはもってこいの参考書です。

 

線形代数の基本を学習するときの基本的なテキスト

ベクトルや複素平面について触れてから、行列やベクトル空間の話に進んでいき、最終的にはジョルダン標準形まで進んでいきます。

目次

  1. ベクトル
  2. 行列
  3. 線形写像
  4. 行列式
  5. 連立1次方程式
  6. ベクトル空間
  7. ランク
  8. 連立1次方程式(2)
  9. 固有値と固有ベクトル
  10. 内積
  11. 正規行列の対角化
  12. ジョルダン標準形

 

線形代数学(新装版)の特徴としては、

  1. いろいろなコンセプトをビジュアル化してとらえる点
  2. 話の流れを重視し、人の思考順、学習する順に話の筋を構成している点

が挙げられます。

 

レビューを見ると、多くの方が「わかりやすい」テキストとしてコメントしています。

 

ただし、わかりやすいと言っても、あくまで昔の高校で学習した行列を学んでいることが前提です。

行列を初めて学習するには、ややハードルが高い書籍とも言えます。

 

「大学新入生のための線形代数入門」で行列の基本的な計算などに慣れてから、「線形代数学(新装版)」を読むとより理解がしやすいテキストであると言えます。

 

また、線形代数学(新装版)を読む際に、ベクトル解析や複素平面・複素空間について学習しておくとより理解が進みます。

 

なお、このテキストは実店舗でもあまり数を置いていないことが多く、ネット店舗でも一時的に在庫切れを起こすことがある商品です。

在庫切れで手に入れるのが遅くなる可能性も考えられますので、見つけたら迷わず買っておいたほうがよい書籍です。

 計算過程がわからないときのテキスト

マセマシリーズは、数学の途中の計算式やつまづきそうなところを詳しく解説していることで知られています。

多くの学生がこのテキストで勉強しているとも言われています。

線形代数で学習する内容のうち、特に重要な点に絞って解説しています。

特に計算過程での解説が詳しいので、計算過程がわからずに先に進めないということはありません。

 

ただし、マセマシリーズは計算過程の解説に傾斜している傾向があるので、線形代数の学習はこれだけでは不足です。

どちらかというと、計算課程がわからないときに使う副読本として活用します。

線形代数を英語で学習したいときのテキスト

 

日本語訳のテキストには「世界標準MIT教科書」とついている線形代数イントロダクションの原著最新版です。

原著自体、やや難しい言い回しがあるせいか、日本語訳がやや不自然な箇所がありますし、そもそもこのテキストだけで理解しようとするのは少し無理があります。

 

というのも、著者の講義とセットになって初めて真意を発揮するテキストだからです。

そのため、原著で読むことをおすすめします。

 

実は著者の講義は、サイトから視聴できるようになっています。

 

MIT OPEN COURSEWARE Linear Algebra

 

このサイトで講義を視聴することができます。

さらに練習問題などの情報が掲載されており、サイト全体のアーカイブをダウンロードすることができるようになっています(VIDEO講義はリンクが貼ってあります)。

VIDEO講義は、設定で英語字幕を表示させることができますので、リスニングに不安を感じたら、字幕表示させて追うのも一つの手です。

 

また、書籍のサポートサイト

 

Support Page

 

に練習問題の略解が掲載されていますので、合わせて参照すると良いでしょう。

最初の1冊目でこのテキストを学ぶには、少々厳しいものがあります。

参照:Lec 1 | MIT 18.06 Linear Algebra, Spring 2005

線形代数を学ぶならこの参考書レベルまでマスターしたい

古くから線形代数のテキストとして親しまれている参考書です。

高校の行列を学習していることが前提であり、いきなりこのテキストで学習するのは難しく感じるかと思います。

そのため、前述までのテキストで線型代数の基本を学習しておくとよいでしょう。

 

しかし、ジョルダン標準形や、ベクトル・行列の解説的な取り扱い、群や体の公理など内容が豊富であるため、今後の数学や物理を学ぶ基礎を身につけるにはもってこいの内容となっています。

数学で使う記号がたくさん出てきますが、ひとつひとつの記号の意味を理解しながら読み進めれば、そんなに難しい内容ではないことに気がつくことでしょう。

 

この「線型代数入門(基礎数学1)」レベルをマスターすると、物理の専門課程の難しい内容に取りかかるときに助けになるでしょう。

先に挙げた参考書で基礎を学習してからこのテキストで学ぶと、線形代数について深く学ぶことができます。

線型代数入門の演習書である

 

線型代数演習 (基礎数学 (4))

 

も合わせて学習すると効果的です(一部の議論は線型代数演習に収録する形になっているため。)。

 

古くから大学数学の入門書である

 

線型代数入門 (松坂和夫 数学入門シリーズ 2)

 

も比較的読みやすい入門書です(ただし、数学で使われる記号がやや多いので、数学で使われる記号の意味を書いた紙をそばに置いて読み進めるといいかもしれません)。

好みに合わせて、テキストを選ぶとよいでしょう。

 

 

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