宇宙のどこかで今星が生まれる。

宇宙を学習する時によく出てくるのが、流体力学です。

ただ、多くの流体力学の参考書は地球上の流体について扱っているため、宇宙で起こっている現象で流体力学をどのように使うかがわかりにくいことがあげられます。

ここでは、宇宙に特化した流体力学の参考書を紹介します。

宇宙流体力学は院試に出るの?

流体力学のテキストはたくさんあります。

数ある中で、今回は宇宙を取り扱った流体力学「宇宙流体力学」の参考書を紹介します。

宇宙関連の研究や勉強を始めるときにおすすめの教科書を紹介します。

 

流体力学の問題が出る所といえば、航空宇宙系の大学院が挙げられます。

しかし、航空宇宙系で必要な流体力学は、ロケットや飛行機などに関する流体力学です。

ここで扱うのは、天体現象に関する流体力学です。

そのため、院試に出るというよりもむしろ、宇宙関連の研究をするときに使うときに読むいわゆる教科書になります。

したがって、院試対策としては、今回紹介する本は不要かもしれません(受験する大学院の過去問題でどのような問題がでるかは確認してください)。

ですが、君のゴールは大学院に合格することではないはず。

大学院に合格して、研究することです。

大学院に入ってから基礎的な勉強を始めようと思っても、思うように時間がとれません。

輪講、講義、自分の研究をするための論文読みなどを考えると、圧倒的に時間が足りません。

大学院に入ってから、基礎学力が足りなくて、研究が面白くなくなったという失敗をしないためにも、ここで紹介することにいたしました。

 

宇宙関連の研究や宇宙関連の観測装置を作成する研究をしようと思っている君にはぜひ読んでいただきたい教科書です。

宇宙流体力学って何?

宇宙で観測されている主なものは、ガス(元素)、ダークマター、ダークエネルギーです。

このうち、宇宙のかなりの割合を占めているダークエネルギーやダークマターはよくわかっていません。

この2つを除けば、主なものはガスということになります。

恒星にしてもガスでできていますし、原始星のまわりにもガスはあります。

そして、ブラックホールのまわりにある降着円盤もガスです。

すなわち、宇宙を学ぶに当たってガスは避けて通れないものなのです。

 

ガスは分子一つを見れば固まったものかもしれませんが、それらが多く集まるとまるで何かが全体である規則に基づいて動いているように見えます。

そのため、宇宙のさまざまな現象を知るときには、流体力学を用います。

さまざまな天体現象に対し流体力学の手法を用いて研究する分野が、宇宙流体力学なのです。

宇宙流体力学を学ぶに当たっての前提事項

宇宙流体力学を学ぶに当たっての前提事項は、大学で学習する数学(解析学、線形代数・ベクトル解析、微分方程式)と物理(力学、電磁気学、熱力学、統計力学、より深く学ぶ際には相対論も)です。

また宇宙流体力学は、流体力学の手法を用いている以上、基本的な流体力学について知っていた方がスムーズに学習できます。

また、一般的にはSI単位系(高校までに学習した単位系)ですが、宇宙分野ではcgs系で語られることが多いため、cgs系のSI単位系での方程式の形の違いについても知っておいたほうがよいでしょう。

おすすめの参考書

今回紹介するのは、宇宙の流体力学を主に扱ったシリーズを紹介します。

全六巻刊行予定のうち、2018年5月現在第一巻と第三巻が刊行されています。

流体力学には良書がたくさんありますが、宇宙について多くの物理過程について、理論的な面や観測的な面で詳しく扱った教科書が少ないという問題がありました。

流体力学は航空機やロケットなどの分野で大いに発達してきたという事情もあるようです。

そのような中、宇宙の流体力学について取り扱った書籍がこちらです。

宇宙流体力学の基本の教科書

このシリーズは、宇宙流体力学という観点から統一的に宇宙を捉えることを目的にしています。

目次を見ると

 

  1.  宇宙流体力学
  2. 天体の大気と形状
  3. 星の構造
  4. 恒星系の構造
  5. 宇宙ジェットと太陽風
  6. 円盤降着流と降着円盤
  7. 星と降着円盤の振動
  8. 星と銀河の衝撃波
  9. 星間ガスの構造
  10. 星と銀河のジーンズ不安定

 

となっています。

流体力学そのもののテキストでないという理由から、流体力学の基礎方程式等は付録に収録してあります。

従来の宇宙物理系のテキストでは、既知のものとして結果のみを用いているような内容も丁寧に解説してあり、式の展開も随所に載せてあります。

それでいて、具体的な例を載せたり、画像を掲載したりして、数式を追うだけの教科書にならないよう配慮されています。

さらに章末に問題を掲載されているため(略解付き)、学習した内容をより理解するのにも役立ちます。

 

難点はcgs系で書かれていることから、SI単位系で慣れてきている君にとっては、最初戸惑うことかもしれません。

最初にcgs系で書かれているテキストであるということを意識しながら、常に単位を確認して読み進めることをおすすめします。

輻射を考慮した宇宙流体力学の教科書

宇宙のさまざまな現象には、「輻射」が関わってきます。

輻射というのは、簡単に言うと「光」のことです。

ただし、光といっても可視光だけでなく、ガンマ線、X線、赤外線、可視光、赤外線、電波といったさまざまな波長全てを意味します。

宇宙で起こる現象は、さまざまな光で観測してわかってきました。

なんらかの光を放っているということは必ず、光、すなわち輻射が絡んできます。

実際の観測から、どのようなことが起こっているかを知るためにも輻射について学ぶ必要があるのです。

この書籍は、その輻射を考慮した宇宙流体力学について書かれています。

前提は、前出の「宇宙流体力学の基礎」の学習を終えていることです。

「宇宙流体力学の基礎」では考慮しなかった輻射について、詳しく解説しています。

目次は、

 

  1. 宇宙における輻射と流体
  2. 物質と輻射の熱平衡
  3. 輻射輸送方程式
  4. 輻射場の物理量
  5. モーメント定式化とエディントン近似
  6. 輻射輸送方程式の解析的な解き方
  7. 輻射輸送方程式の数値的な解き方
  8. スペクトル線と輻射輸送
  9. 輻射流体力学の基礎方程式
  10. 天体大気の構造と輻射
  11. 輻射駆動風と輻射優勢降着流
  12. 輻射流体波動と輻射流体不安定
  13. 相対論的輻射輸送と相対論的輻射流体力学

 

となっています。

数式の展開も記載しつつも、具体的な例や図・グラフをいれて、どのように使われているかなどの理解ができるよう配慮されています。

もちろん、章末問題とその略解も掲載されていますので、これらの問題を解くことで理解が進むでしょう。

シリーズを通してcgs系で書かれていますので、式を見るときには単位を意識しながら読むことをおすすめします。

 

流体力学の参考書。入門書から理論の基本までのテキストを紹介

にほんブログ村 受験ブログ 大学院受験へ