宇宙系を学習したいと思って手に取った本を見ると、専門過ぎて理解するのが難しかったという話を耳にすることがあります。
宇宙系の研究では、数学と物理を使って研究を行うため、数学と物理の知識は不可欠です。
とはいえ、天文学系の学習も必要になってきます。
ここでは、大学教養課程までの天文学の基礎教科書を紹介します。
天文学が難しいのはなぜ?
天文学の参考書が難しいのは、前提としている内容がテキストを見ただけではわかりにくい点が上げられます。
天文学は、数学と物理の知識を使って宇宙の謎を解明しようとする学問です(最近は、生命起源の謎についても加わってきています)。
そのため、専門分野の参考書では、大学で学習する数学と物理の知識が暗黙のうちに「前提」となっているのです。
天文学系の院試の試験では、数学と物理が必須になっています。
東京大学天文学系の試験では「天文学」の問題も出題されますが、それでも数学と物理の問題も解く必要があります。
それだけ、数学と物理が大切なのです。
しかし、大学で学習する数学と物理の知識が前提になっているということを明示している参考書が非常に少ないため、それを知らずに読み始めると、難しく感じてしまうのです。
そして、もう一つの問題があります。
それは、理系の高校生にとって、地学を選択できる高校は非常に少ないという事実です。
天文学の内容は、高校では地学分野で深く扱います。
実は、物理でも扱っているのですが、天文学と関係なさそうな題材を選んでいることも多く、気づきにくい部分も多いのです(万有引力の項目は明らかに天文学と関係あるのはわかりますが・・・)。
つまり、高校で学習する天文学の知識がないことも、天文学の参考書を読むのを難しくしている原因でもあるのです。
これらの問題を解決するために、以下で天文学系の参考書をステップごとに紹介していきます。
おすすめの参考書
高校レベルまでの天文知識の復習
中学から高校レベルまでの天文知識の学習
中学レベル、高校レベルのおすすめの参考書が「天文宇宙検定公式問題集」と「天文宇宙検定公式テキスト」です。
これは、天文宇宙検定の問題集と参考書になっていますが、天文関連の宇宙の話題について、わかりやすくまとまっています。
3級が中学レベルで2級が高校レベルです。
天文宇宙検定公式テキスト3級 目次
- 星の名前の七不思議
- 星座は誰が決めたのか
- 空を廻る太陽や星々
- 太陽と月、仲良くして
- 太陽系の仲間たち
- 太陽系の彼方には何がある
- 天文学の歴史
- そして宇宙へ
天文宇宙検定公式テキスト2級 目次
- 宇宙七不思議
- 太陽は燃える火の玉か?
- まだ謎だらけ(!)の太陽系
- 十人十色の星たち
- 星々の一生
- 銀河系は何からできているのか?
- 銀河の世界
- 天文学の歴史
- 人類の宇宙進出と宇宙工学
- 宇宙における生命
お話を中心に書かれていますので、天文に関する知識を増やすのにはもってこいの参考書です。
別売りの問題集で確認できる点、参考書自体も2年程度で改定されている書籍が発売されている点で、直近の発見なども反映されやすくなっているのがいいですね。
高校地学全般の知識の学習に最適な参考書
宇宙は上を見上げて、地学は下を見る・・・。
左右対称という言葉はあるのに上下対称という言葉はありません。
それだけ、上と下というものは違和感を感じられるものなのです。
そのため、地学は天文・宇宙とは全く無縁の世界だと思われがちです。
けれども、地球だって太陽系の惑星の一つです。
地球を調べることは、宇宙を調べることでもあるのです。
一番よく調べることができる惑星が地球なのです。
遠くのものを調べるときに手がかりにするのは、近くでよく調べることのできる天体を参考にします。
地球でわかったことを元に、推定していくのです。
一見宇宙とは関係ないように思えますが、宇宙を調べて推測するときには大いに参考になるのです。
ところが、高校で理系コースを選択したときに、地学を選択できる高校はあまり多くありません。
そのため、高校地学の参考書はほんとどみかけることができません。
教科書がありますが、市販されていないため、入手が難しいという問題があります。
しかし、数研出版では一般の人が読みやすいように、地学基礎と地学に分かれている内容をうまくまとめ、1冊の教科書風に仕上げた参考書を販売しています。
高校地学の教科書とほぼ同じ内容が網羅されていますので、一通りの内容を学習することができます。
もちろん、HR図を含めた天文・宇宙の内容も学習することができます。
大学教養レベルの参考書
天文全般が書かれている参考書
「シリーズ現代の天文学」は、天文学全般の教科書を出してほしいという要望から、日本天文学会の事業として出版されているものです。
第1巻では天文学を「宇宙-地球-人間」という観点から全般を見渡せるようになっています。
第2巻以降を各分野の専門的な内容の概要をまとめているものです。
大学の教養として開講している天文学関連のレベル程度です(講義によってはよりレベルの高い内容まで学習するかもしれません)。
それぞれのつながりを知ることは、天文学の専門的な学習をするときに役立つはずです。
専門的な研究に入る前に読んでほしい1冊です。
第2版からは電子書籍版も出版されつつありますので、電子書籍版を利用するのもいいかと思います。
目次
- 現代宇宙観までの道のり
- 宇宙の起源と現在の姿
- 元素の起源
- 太陽系
- 太陽系外惑星
- 地球と人間
- 時と暦
物理のアプローチからの天文学概要の参考書
宇宙には不思議がたくさんあります。
中性子でできている中性子星、光すら情報がでないブラックホール、そして宇宙誕生・・・。
観測によって間接的、直接的にわかっていることですが、これらがどうしてできたのかということを考えるときには物理学の成果が反映されます。
近年、物理学では素粒子物理学の相次ぐ発見により、物質の起源、力の起源を突き止めることができそうな状態にまでになりました。
実は物質の起源、力の起源を突き止めることは、宇宙の進化の歴史を調べることと同義であり、そして中性子星やまだよくわからないダークマターやダークエネルギーについて突き止めることでもあるのです。
「シリーズ現代の天文学 人類の住む宇宙 第2版」でも宇宙の誕生や元素の起源なども触れていますが、素粒子やダークマター・ダークエネルギー関連の内容はあまり多く語られていません。
そこで、この不足分を
「宇宙の物質はどのようにできたのか」
という書籍で補います。
流れとしては、物質の起源や質量の起源など素粒子物理学の分野からの宇宙へのアプローチの内容です。
「宇宙の物質はどのようにできたのか」と「シリーズ現代の天文学 人類の住む宇宙 第2版」の2つを読むことで、宇宙に関する全般的な流れをつかむことができるでしょう。
どちらも外せません。