計算が大変?!

数式の展開に追われる地獄の科目?!

解析力学は、ニュートンの運動方程式を一般化して、力学に含まれる数理の構造を明確にしようとした試みからスタートしています。

そのため、数式の展開が非常に多くなっています。

専門課程で講義があるとはいえ、たった十数回しかない講義で解析力学の講義を終わらせるためには、かなりの駆け足で進まなければなりません。

解析力学の基本を学ぶ際には、

 

  • Lanrangeの方程式、
  • Hamiltonの運動方程式、
  • 正準変換

 

など、元となる式を導き出すためには多くの計算が必要になります。

そのため、日々の講義は数式の説明で終わってしまうことになるかもしれません。

さらに、解析力学で用いられている基本的な例は、力学の問題で解くことができてしまうものを扱っていることもあるため、わざわざ計算の面倒な解析力学を用いる必要性が見えなくなることもあるかもしれません。

そのため、物理系の消化科目と思われてしまうこともあります。

しかし、物理学の一環として解析力学の講義があるわけではありません。

解析力学から発展したものは、

 

  • 天体力学(人工衛星軌道含む)
  • 振動論
  • カオス(非線形力学、種々の現象であわられる。)
  • 統計力学
  • 相対論
  • 量子力学

 

といった現在の研究テーマになりそうな分野に広がっています。

つまり解析力学を学ぶことは、現在研究されているテーマへを続くものなのです。

解析力学を学ぶことは、最先端への道を進む第一歩なのです。

ここでは、つまづきやすい解析力学のテキストをレベル別に分類して紹介いたします。

 

 

なお、解析力学では、大学数学で学習する

 

  • 線形代数
  • 解析学
  • ベクトル解析
  • 常微分方程式
  • 偏微分方程式

 

を学習している前提になっています。

これらは解析力学の講義の前に開講されているかと思いますので、これらの大学数学の復習をしておくと安心です。

ただ、講義の関係で常微分方程式と偏微分方程式は解析力学の講義に間に合わないかもしれません。

これらは講義で出てきたときに、そのつど該当部分をフォローする形で理解できると思います。

多段階ステップで攻略?!

解析力学は計算が多い点でも厄介な科目なのですが、もう一つ厄介な点は、易しいテキストから難解なテキストまでの差があまりにもありすぎることです。

解析力学は、ニュートンの運動方程式を一般化して、力学に含まれる数理の構造を明確にしようとした試みからスタートしています。

そして、この解析力学を用いてさまざまな分野の研究が進んでいったのです。

そのため、ラグランジュの方程式やHamiltonの運動方程式を求めるためのテキストから、これらの方程式から出発して発展させた内容をメインに書いた書籍まで、同じ解析力学の名前でもいくつもでてくるのです。

ファーストステップ

初めて解析力学を学習するときには、基本となる原理や方程式そのものについて学びます。

数式の展開が多い分、数式に追われる形になりがちですが、解析力学の利点を解説しながら、原理や方程式を学べるテキスト(教科書)を紹介します。

変分原理や仮想仕事でつまずいたらこれ!

著者自身が量子力学の専門分野に進んだときに、解析力学を学び直してようやく解析力学のやっていたことを理解したという経験がもとになっています。

前書きに、解析力学がわからなくなってしまう原因は

 

  • 「○○の原理」とう言葉そのものがすごく難しく感じるため、
  • 何のために解析力学を学ぶのかがわからないため、

 

の2つだと著者は考えています。

この書籍では、どのような理由でこの式は成り立つのかを解説し、解析力学を導入するとこんな問題が簡単になるという点を具体的に語っています。

特に解析力学の最初のほうにあるチェックポイントの「変分原理」や「仮想仕事」については丁寧に解説されているため、この本からスタートすることで、解析力学のチェックポイントを乗り越えることができるでしょう。

解析力学の先もかいつまみたいときのテキスト

 

力学の項目で紹介した「力学1」の続きの書籍です。

丁寧に解説してあり、さらに数式の展開に追われがちな解析力学の先にある

 

  • 振動一般論、
  • 天体力学(3体問題のさわり)、
  • 前期量子論、
  • 特殊相対性理論の概要

 

という部分にも触れています。

ここに出てくる数式も、基本的に大学数学の初めのほうで学習する解析学(微分・積分、常微分方程式と、偏微分の考え方)、線形代数で理解できるよう配慮されています。

ただし、発展的な内容の部分は、あくまで「解析力学からこんなことに結びついています。」という著者のメッセージなので、より深く学びたい場合にはその分野用に書かれたテキストを参照してください。

もしこの「力学2 解析力学」のレベルに物足りなさを感じましたら、セカンドステップの「古典力学 物理学選書」で学習してもよいでしょう。

 

解析力学の基本は、この2冊のうち、好みでどちらか1冊マスターする形で十分です。

式の展開で困ったらマセマシリーズ

 

マセマシリーズの最大の特徴は、とにかく数式の展開が事細かに書かれていて、間違えやすいポイントも注釈がついている点です。

大学のテキストは数式の展開だけではなく、物理というものの考え方についても学べるよう設計されているため、紙面の都合上、数式の展開はある程度押さえられてしまっています。

数式が載っていない部分でつまづいてしまったときに、助けになるのがマセマの大学キャンパス・ゼミ。

さっと、数式の展開を学んで自分で導き出せるようにするという時には力強い味方です。

ただし、数式の展開が詳しい分ポイントに絞っているため、解析力学の基本的な内容しか載っていません。

そのため、「Hamilton-Jacobiの偏微分方程式」や「Noetherの定理」は掲載されていません。

解析力学の数式展開を学んだ後は、考え方をフォローするためにもう1冊解析力学のテキストで学ぶ必要があります。

マセマシリーズはテキスト(教科書)というよりは、むしろ補助資料として活用して、もう1冊別のテキストで解析力学を学ぶことで、バランス良く学ぶことができます。

セカンドステップファーストステップとセカンドステップの差は、学習する内容に差はありません。

違いは、途中の経過式がどれだけ書かれているかということと、発展の具体例の記述の詳しさです。このレベルまでマスターできれば、ひとまず大丈夫です。

 

院試レベルの問題を解くならこのテキスト・問題集

古典的名著と言われている書籍です。ページ数の関係から分冊になっています。解析力学の基本となる部分は

 

  • 第1章 基本的原理の概観(D’Alembertの原理、Lagrangeの方程式)、
  • 第2章 変分原理とLagrangeの方程式(Hamiltonの原理、変分原理)
  • 第8章 Hamiltonの運動方程式、
  • 第9章 正準変換、
  • 第10章 Hamilton-Jacobiの理論と作用-角変数

 

第2章のあとに独特な和の規則を用いて記述している、

 

  • 第4章 剛体の運動学

 

を読んでから第8章以降に進むとよいでしょう。
しかし、テキストに書かれている内容が多いため、このテキストを使用した講義の場合、時間の関係上、おそらく上記の内容を終わらせるのがギリギリかもしれません思います。
そして一通り学んだ後で残りの章を読み進めます。

(なお、第10章でフーリエ級数を使う場面があるので、フーリエ級数の概要は知っておくと理解が進みます。)

宇宙系や物理系、そして人工衛星の軌道制御を学ぶ工学系に進学した君には、この書籍を読み進めてほしいと考えています。

というのも、天体力学、歳差運動、特殊相対論、古典カオスの内容が詳しく触れているからです。

特に第3版では古典カオスの項目が追加されています。

カオスは自然現象でも見られ、その範囲は気象学だけにとどまらず、軌道計算などにも現れるものです。

基本的な部分を学習し終えたら、残りの章もチャレンジしてみましょう。

第7章の特殊相対性理論の古典力学では、テンソルがでてきます。

このテンソルについては、ベクトル解析の講義か相対論の講義で学習する可能性もありますが、もし該当講義が抜けている場合には、以下のいずれかのテキストで学習するといいでしょう(テンソルの学習はベクトル解析を学習していることが前提です)。

 

 

上記の本は、主に特殊相対性理論について解説している参考書です。

しかし、この本を最初から順に進めることで、少しずつテンソルの使い方もマスターできるよう配慮されています。

特殊相対性理論を学習しながら、テンソルも学ぶことのできるテキストとなっています。

 

 

 

 

より深く解析力学を学びたい人向け

サードステップ数学科の専門分野で学習する解析学(微分・積分、微分方程式)、線形代数、幾何学(線形空間、ベクトル、テンソル)、多様体を学んだ後、読む書籍となります。

そのため、上級者向けのテキスト(教科書)として紹介されることが多い書籍です。

院試対策というよりは、研究で使うときに読むべき参考書になります。

もし大学院に入って、研究で使いそうだと判断しましたら、学習しておくことをおすすめします。

大学院に入ると、研究や講義、輪講などで思ったように学習する時間がとれません。

必要だと判断しましたら、大学院に比べて時間の取りやすい大学生の長期休みのうちに学習しておきましょう。

豊富な例がある分野への偏りなく掲載されているテキスト

 

 

解析力学のテキストは先に紹介したゴールドスタインのテキストが改訂されたとはいえ、古くから名著が存在してて、よく推薦されるテキストも多くがかなり昔に書かれたテキストになっています。

また、解析力学は、多くの分野で使われているものです。

そのため、名著と呼ばれるテキストでも解析力学の書籍は出てくる例や誘導などが著者の専門分野へのアプローチ方法になってしまいがちです。

その分野での学習には非常によいのですが、他の分野のが人が読むには少々使いづらいという問題がありました。

しかしこの本は違います。1990年代までになされた解析力学の新しい定式化を、物理学のサイドから、できるだけ広く詳しく、丁寧に展開していています。その中でも、

 

  • 状態空間・相空間上の力学を、幾何学的な視点からわかりやすく解説すること

に主眼をおいています。さらに、下巻の後半には

 

  • 可積分系
  • 摂動論
  • 拘束系の正準方程式
  • 相対論的力学

といった応用についても掲載されています

。必要な数学は本文中で解説されているという話ですが、大学で学習する数学は一通りマスターしていないと、本文でスムーズに読むのは非常に難しいでしょう。

なお、どの本にも言えることですが、その書籍での数学上の約束事は必ず頭にたたき込んで読み進める必要があります。

数学的な要素が強い書籍

 

天体力学の分野でも有名な著者が書いた書籍です。

解析力学で使う方程式の導出よりも、振動論、剛体の運動論、Hamilton形式などの力学系の基本的な問題をメインに解説しているのが特徴です。

もともと数学科で行った講義がベースになっていることから、数学的要素が非常に強いです。

数学ともなると抽象的なイメージがつきまといますが、このテキストは図やグラフをできるだけ掲載して、理解できるよう配慮されている点が特徴です。

内容も抽象的な議論だけでなく、具体例を占めている点でも理解の助けになります。

天体の軌道に興味のあるのであれば、チャレンジしてもいいかもしれません。

日本語版は初版の翻訳ですが、英語版は改訂版が出版されています。改訂版には、Appendix の

 

  • 14: Poisson structures
  • 15: On elliptic coordinates
  • 16: Singularities of ray systems

 

が新たに追加されているのが大きな違いです。

 

改訂版の日本語訳の出版は、著者が亡くなられているため、非常に難しくなっているという話をきいたことがあります。

現時点で日本語で読めるのは初版ですが、Appendixが追加された以外、目次の順番に変更はありませんでした。

日本版は、人気のあるテキストであるため、発売されてもすぐに品切れになってしまいますが、ある程度要望が集まると再び発売されるといったことを繰り返しています。

なお、定価は税抜き9.000円(8%の消費税で、9,720円)です。

なかなかお目にかからないこともあり、新品定価で手に入らない場合には、中古でも9,000円で販売していたら、新品の値段と変わりませんが、迷わず購入しましょう。

電磁気学の院試。応用例が多く、幅広い分野で出てきます。

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