流体力学は、流れのある現象を考えるところでは、必ず出てきます。
逆に言えば、身近にその現象を見ることのできる単元の一つなのです。
例えば、川に行って石の周りの水の流れがどのようになっているか観察します。
数学的にはこの複雑な流れを解析的に解くのは難しくても、近似をつかったり、数値計算を用いたりして、取り扱うことができるのです。
複素関数・微分方程式の数学的要素や力学・電磁気などの物理的要素との関連もありますので、計算などで難しく感じることもあるかもしれませんが、それを身近な現象に置き換えてみるとイメージがしやすい分野でもあるのです。
また流体力学は、自動車や飛行機、ロケットなどの実用面や宇宙の現象を扱うでも広く使われているため、非常に広範囲になります。
そこで今回は、流体力学の基礎となるべく参考書を紹介します。
流体力学を学習するに当たっての前提事項
流体力学を学習するためには、数学の解析学(微分、積分、微分方程式)、線形代数(含むベクトル解析)、複素解析等の大学で学習する数学の知識が不可欠です。
また、物理に関しても力学、電磁気学で活用することからこれらの知識は必須です。
さらにテンソルの知識があると、レベルを上げた参考書を読む際にも比較的スムーズに読み進めることができます。
テンソルに関しては、テンソルについて書かれた書籍を独学で読むか、物理入門コースの相対性理論を学習しながらテンソルも学ぶかのどちらかの方法で、予め学習しておくとよいでしょう。
おすすめの参考書
初めて学習する際の入門書
物理入門コースとして古くから使われている入門書です。
旧版はハードカバーで厚い参考書だったのですが、新装版になり内容はそのままで紙が薄くなり持ち運びに便利になりました。
さらにKindle版も発売されていますので、電子書籍版を購入することで持ち運びに苦労しなくなったのがうれしいところです。
ただ、閲覧する際には画面の大きいタブレットやPCを使った方がストレスは少ないと思います。
流体力学は流れについてどのようにして数式で表すかを考え、導き出そうとしているものです。
ともすれば数式を追うだけになりがちですが、この参考書は図やグラフ、写真を掲載して現実の現象との結びつきをイメージしやすいよう配慮されています。
弦と振動、弾性体についてもこの本でカバーしています。
流体力学とは関係なさそうに思えますが、流体力学の本文解説の部分で「弦と振動」で用いた方法を使い、さらに流体力学の考え方が活用できる「弾性体」につながるように配列されています。
この参考書に関しては、流体力学を講義で学ぶ際には、講義が始まるまでに「弦と振動」部分を終わらせておき、流体力学の解説部分は講義に沿って学習すると、読みやすいでしょう。
工学系の入門書
工学系の分野では、理論よりも実例が重要になってくる場合もあります。
この本は実例を取り入れながら流体力学を学んでいくスタイルになっています。
そのため、例題の説明は丁寧で図表が多いのが特徴です。
ただ、理論的な解説については簡略化がちなので、理論的な解説については、別の本で補う必要があります。
理論流体力学の基本を学ぶ本
完全流体力学についてはほぼ網羅しています。
このほかにも粘性流体のおそい流れを扱っています。
またこの参考書は、不連続流を扱っている数少ない参考書です。
例えば、水が流れているところに重い石を置いたときの流れを観察すると、石の後ろで水がとどまっているように見える領域が発生することがあります。
このような流れについて扱う場合の理論です。
もともと前編・後編の2冊分冊での出版計画で、後編で粘性流体の境界層・乱流や高速気流・電磁流体力学についての項目も扱う予定だったそうです。
残念ながら後編の出版計画はなくなってしまいましたが、数学的な知識は必要であるものの、理工系の大学で必須となっている数学の知識があれば十分読みこなせるレベルにまで落として、一つ一つの項目を丁寧に解説されています。
ただ、この1冊で完全流体はOKと言ってもいいぐらの内容であるため、講義と並行して学習する場合には、少し急ぎ足で学習する必要があるかもしれません。
後編で扱う予定だった内容、境界層・高速気流については、同じ著書の岩波書店から出版された
に解説があります。
また、絶版になってしまっていますが、
の第5章にも高速気流の解法の解説があります。
乱流については、別の参考書でカバーすることになります。