電磁気学テキストのおすすめ。SIと他の単位系の変換はこれで解決!

高校までに学習する教科書は国際単位系SIで書かれています。

現在、国際的に標準とされる単位は国際単位系SIです。

この流れに伴って、古くからある名著も国際単位系SIで書き直して出版されることが多くなりました。

しかし、研究分野によっては、国際単位系SI以外の単位が使われているところがあります。

さらに過去文献を読むときに、国際単位系SI以外の単位で書かれた文献を読む必要が出てくることがあるかもしれません。

ここでは特に、電磁気学で使われている国際単位系SI以外の単位系と国際単位系SIの関係について述べた書籍を紹介します。

 

国際単位系SIで使われている定義が変わる?!

2018年の国際単位系SIの改訂で大きな変化が生まれました。

それは、質量の基準であった「キログラム原器」が廃止された内容になっていることです。

これは、「キログラム原器」よりも精度の良い基準が認められたことに他なりません。

昔に作られた原器は,測定精度が良くなかった時代にはかなりの精度を持っていました。

 

しかし、この原器も厳重に管理されているとはいえ、ほこりを掃除したり化学反応を起こしてしまったりするなかで、わずかながら変わってしまうという欠点がありました。

そのうち、原器で求められる精度の問題で、他の定数などの値を決める精度の足を引っ張るようになってきました。

原器よりも正確に決められるものがあれば、そちらに移行した方が定数などの値もより精度が増します。

 

原器よりも精度の良い指標が確立したことで、「キログラム原器」が廃止されることになったのです。

でも、大きさは今までと変わらないようになっていますので、日常生活を送る上では何の心配もありません。

 

もうひとつの問題「電磁気学」の単位系

力学の古いテキストを見ると、単位が m, kg, s ではなく、 cm, g, s となっているテキストがあります。

昔は、CGS系と呼ばれる単位系を使うのが主流でした。

力の大きさも「N(ニュートン)」ではなく、「dyn(ダイン)」が使われていました。

表記に少し戸惑うことがあったとしても、これはあまり問題にならないで読み進めることができます。

例えば、\( 1\)N \(= 10^5\) dyn という対応づけできるからです。

 

同様な問題が電磁気学でもありました。

これは電磁気学が発展する中で、使いやすい単位系がいくつも生まれました。

しかし、電磁気学の単位系については、力学のようにうまくいきませんでした。

それは、電磁気量の定量化が力でなされていたからです。

すなわち、単に何倍かしただけでは同等な値が求められないのです。

 

しかも困ったことに、国際単位系SI(MKSA単位系)以外にもCGS esu(electrostatic units)単位系(静電単位系)やCGS emu(electromagnetic units)単位系(電磁単位系)、そしてこの二つを融合したGauss単位系の3つが混在しているのです。

なお、CGS esu単位系とCGS emu単位系は以下のように定めています。

 

  1. CGS esu単位系:「基準となる電荷の大きさ」をそれらの間にはたらく力よって定める。
  2. CGS emu単位系:電流の間にはたらく力によって「電流の大きさ」を定める。

したがって、電磁気学では単位系によって同じものの単位が異なるため、単純な定数倍だけでは表すことができなくなってしまっているのです。

文献によって、これらの4つのうち、どの単位系を用いているのかを判断して、自分の知っている電磁気学の式から変換して理解する必要が出てきているのです。

電磁気学の単位系の歴史と変換を知るための書籍

国際単位系SIが主流になりつつあるとはいえ、分野によっては国際単位系SI以外の単位系が主流であったり、文献によってさまざまな単位系で書かれていることも学問を学ぶ上で困難をもたらしています。

全て国際単位系SIで書き直せれば問題ないのでしょうが、過去の論文などは訂正できませんし、古い文献しか資料がない場合も改訂されるのを待っている時間はありません。

この場合は自分で変換するしかないのです。

このようなときに、それぞれの単位系の関係を理解するのにおすすめの書籍がこちら。

 

この本は国際単位系SIが改訂されるのを機に、電磁気学の文献によって単位系が異なることにより、講義をする先生や学習する人にとって、スムーズな学習を妨げる原因となっている問題を取り上げた書籍です。

物理学と単位系の話から始まり、国際単位系SI、単位系を定義する現象の話をした後、電磁気学の単位の話に入っていきます。

そして、最大のポイントである電磁気学の単位系の進化と単位系間の変換の話に入っていくのです。

変換の公式さえ知ってしまえば、あとは文献を読むときに自ら変換すればそれでおしまいのような感じを受けます。

 

しかし、ただ変換の式だけを知るのではなく、どうして国際単位系SIが改訂をしたのかと行った理由や単位系を定義する現象の話を理解することは、研究を行う上で、知っておく必要があります。

特に定義が変わると有効数字が変わりますので、計算結果の正確さが変わってくる可能性もあるからです。

院試では国際単位系SIを知っていれば十分ですが、研究をする上ではこの電磁気学の単位系の違いは知っておく必要があります。

内容的にはやや高度な計算も含まれていますが、それでも手元に置いていざ使う時に手に取れるようにしておくだけでも、文献を読むスピードが変わることでしょう。

手元に置いておきたい1冊です。

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