複素数は物理系で必須の概念?!
複素関数は、物理系や工学系の学習では必須の項目になっています。
量子力学では複素数を使ってシュレディンガー方程式が記載されます。
物理現象は実数でも記述できそうなものなのですが、実数だけで記述しようとすると複雑になったりして、見通しがよくないことが上げられます。
ところが、複素数の世界で扱うと今までは別々のものであると思われているようなものも実は同族であることがわかったりします。
例えば、オイラーの公式
\[ e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\]
は指数関数と三角関数を結びつける役割を果たしています。
実数の世界では指数関数と三角関数とはバラバラでしたが、複素数の世界では指数関数と三角関数はお互いに書き換える事ができるのです。
このように複素数を用いることで、全体を見通しのよいものとすることができるのです。
また、実数の範囲では扱いきれなかった実関数の定積分も複素数でなら求めることができるようになるという、計算の面でも複素数は有効なものなのです。
この性質を大いに利用したのが量子力学です。
量子力学のシュレディンガー方程式には虚数を表す \(i\) が出てきます。
このほかにも、流体力学や電磁気学、交流回路など理工学の幅広い分野で応用されています。
最近は複素数よりももっと上のレベルの四元数もでてくるようですが・・・。
まずは、複素数レベルでの関数や、微分・積分や等角写像等をマスターした上でその上のレベルの数を学習するといいでしょう。
複素関数が難しいわけ。
高校や大学の初級で学習する実数の関数までは、図やグラフを書いて理解したかと思います。
イメージは大切で、どのようなものかをしっかり書くことでみえてくることもあるからです。
複素数レベルでも関数があり、それを複素関数と言います。
複素数を扱うのであれば、複素関数について知らなければなりません。
しかし、複素関数の講義になるとそれが通用しません。
講義の内容が非常に抽象的なものとなるため、実関数のような図やグラフを書いて理解しようという方法が通用しません。
ガウス平面によって、横軸に実数を、縦軸に虚数を取ることで、点は亜割らすことができます。
ただ、この表し方に注意してください。1つの数を表すのに2つの変数(実部、虚部)の2つが必要なのです。
すなわち、ある数の複素数:\(z \) は、
\[ z = x + iy (x, y は実数)\]
と2つの実数の変数が必要になってきます。
そのため、複素関数:\(w = f(z) \) は、みかけは二つの変数になっていますが、\( w = u + iv (u, v は実数)\) と \( z = x + iy (x, y は実数)\)として書くと、
\[ u + iv = f(x + iy) \]
となり、実は四つの変数で表されていることがわかります。
私たちが1つの図で描けるのは三つの変数(すなわち、3次元)の世界までですから、1つの図で描くことはできません。
実部と虚部にわけて描くことはできますが、単純な関数一つとってもかなり複雑な形になります。
そのため、図を描いて直感的に理解しようという方法が通用しないのです。
したがって、定義を理解して計算を追うという方法をとらざるを得ないのです。
この直感的に理解できない部分が、難しいと感じてしまう原因なのです。
ひっかかったら、直感的に理解しようとして、それが通用しないので、難しくなってしまうのです。
しかし、直感的な理解が難しいということを知った上で、定義から計算を追えば、計算自体はそんなに難しくありません。
丁寧に追うことで複素関数がとても便利で有効なものと感じることができるでしょう。
おすすめの参考書
複素関数を学習するに当たって難しく感じる部分があるのは、テキストの「天下り的」に式を導入している部分です。
この天下り的という表現の部分は、著者が読者に既に学習済みとして考えているか、詳しく議論すると本筋が外れる、もしくは紙面の関係で膨大になってしまう等の理由で省略されているものなのです。
この部分が学習済みで理解できていれば問題ないのですのが、高校までに学習する範囲は、学習指導要領の変更により数年ごとに変わっています。
この変更が必ずしも大学の講義で反映されているとは限りません。
このギャップもまた複素関数を難しいものにしてしまっているのです。
講義のテキストとして指定されているもの中には、要点が簡潔に書かれていて、高校までのカリキュラムと大学で学習する内容にギャップが生じているものもあります。
そこで、今回紹介する参考書は、このギャップを埋めつつ、複素関数の基本について学べるものを紹介いたします。
複素関数は奥が深いため、テキストの中には厳密性に注意して議論を進めていくものがあります。
これは深く学ぶためには必要なことなのですが、同時に複素関数を難解なものにしてしまいます。
このような厳密性については、一度複素関数の概略を学習した後に改めて学習した方が効率的です。
一方、理工系の場合、講義時間は大体1コマ(半期)と限られているため、短期間で複素関数を使えるようにならなければなりません。
さらに、高校までのカリキュラムとの接続に無理のないような参考書が求められています。
書籍ではどれかに重点を置いたら、どれかが弱くなってしまうというのが悩みの種ですが、理工系の応用分野で使う場合には、まずは使えることの方が重要になってきます。
そのため、厳密性よりもむしろ道具として使うことをのほうに重点が置かれます。
なかなかいい参考書が見つからなかったのですが、初めて複素関数を学習する際にもってこいのものがみつかりました。
それが、
道具としての複素関数
です。
この参考書の特徴は、数学の道具として割り切って、1コマ(半期)の講義でカバーできる程度の内容が掲載されていることです。
なおかつ、複素数や実関数の復習から始まり、徐々に複素関数に慣れていけるような構成になっています。
わかりやすく解説しているため、やや厳密性には欠けますが、その部分はこの参考書で学習した後、別のテキストで補えばより理解が深まることでしょう。
ただし、わかりやすいと言っても、自分で式の展開を行い、1つ1つ何をやっているのかを理解しながら行うことは、複素関数を理解する上では必須ですよ。