ベクトル解析とは?
物理系の講義では、ベクトル解析は必須です。
力は向きと大きさがあります。
物体の速度を見るときも、向きと大きさを考えます。
ある物体の運動を考えるとき、位置、速度、加速度を調べることで、物体の運動がわかります。
速度の微分が加速度で・・・と既に学習したかもしれません。
でも速度はベクトルです。
つまり、加速度を知るためには、ベクトルである速度を微分する必要が出てくるのです。
高校で学習した微分・積分や大学の始めに習う解析学に出てきた微分・積分は関数でした。
「ベクトルなんて微分・積分ができるの?」と思ってしまうかもしれません。
結論から言えば、できます。
ベクトルで表されたものを詳しく分析するときに微分・積分を用いることができるのです。
ベクトルを微分・積分を使って調べることをベクトル解析といいます。
微分・積分等を学習する解析学とベクトルがコラボレーションしたものがベクトル解析なのです。
ベクトル解析は難しい?
ベクトル解析はベクトルを微分・積分を用いて詳しく調べる方法なのですが、講義を聴いていてもよくわからないことがでてきやすいところでもあります。
理由は「grad」「div」「rot(curl)」「∇」といった記号や線積分といった、曲線の向きも考慮した積分といった概念など、技巧的な要素がたくさん出てくるからです。
けれども、一般に講義で指定されている教科書には、こういった技巧的な部分しか載っていないものが多いのです。
大学は高校までと違って、足りない部分は自分で学習することが前提になっているからです。
しかし、これを学習する上で前提となる内容が明確になっていないため、ベクトル解析を学習するときにその前提を学習してない状態で学んでも、計算方法がわからないため、どういうものかを理解せずに、ただ定理を暗記して乗り切ってしまおうと考えてしまいがちです。
ベクトル解析は力を考える学問を学習するときには必ず出てきます。
定理をただ暗記しても乗り切るのは難しいのです。
暗記に頼ってしまう部分が生じることで、ベクトル解析が難しく感じてしまうのです。
数学的な研究もされていますので、ベクトル解析についても数学方面からのアプローチと理工学系からのアプローチの2通りがあります。
ここではベクトル解析を道具として使うものと割り切って学習する君におすすめの教材を紹介します。
(まずはある程度使えるようになることが先決です。
その上でもっと詳しく正確に知りたいというときは、上のレベルの参考書で学習するとよいでしょう。)
おすすめの参考書
直感的に理解するならこの参考書
ベクトル解析でつまづく要因の一つに、テキストを学習する上で学習の前提となる内容がわからないため、いざ学習し始めたときにどう計算したらいいかが分からない場合があります。
例えば、高校までは\(x\)-\(y\)平面座標系(デカルト座標系、直交座標系)で考えていましたが、私たちは3次元に住んでいますので、物体の運動を考えるときは3次元座標系で考えます。
3次元座標系で考えるとき、デカルト座標系だと何かと不便なときがあり、別の座標系で考えた方が便利な場合もあります。
特にデカルト座標系から球面座標系への変換はよく使われますし、電磁気の分野では円柱座標系も用いられます。
この座標系の変換や2重積分や3重積分、曲線・曲面に関する部分は、学習済みとして進めていってしまうことが原因で、ベクトル解析がわからなくなることがあります。
この参考書は、そういったベクトル解析に必要な前提の部分から解説を始め、ベクトル解析の必要な部分にまで話を持って行くスタイルで書かれています。
直感的にわかるよう書かれていますので、厳密な証明がなく使っている部分もあります。
しかし、概要を理解することの方が先決です。
ベクトル解析のポイントを学習する上では、学習の前提となる内容が少ないため、初めて学習する場合や、ベクトル解析でつまづいたときに読むのにはもってこいの構成になっています。
grad, div, rot, ガウスの発散定理をイメージしたい時の参考書
ベクトル解析は、座標変換や微分・積分を用いますので計算がかなり出てきます。
計算自体はできるのだけれども、理工系の場合、式から実際の自然現象のイメージを膨らます必要があります。
例えば div は湧きだしといったイメージです。
2次元や3次元でのイメージは?
座標系ごとのイメージは?
と思い浮かべることができない場合もあるかもしれません。
そんなときは、この参考書の「第7章ベクトル解析の基礎」をみるといいでしょう。
座標系の図だけでなく、イメージも載せてあるので、ベクトル解析に出てきた式のイメージがしやすくなっています。
ただし、線積分等の項目はないため、これらは別の参考書で学習する必要があります。
詳しく学び、演習できる参考書
詳解つき問題580問がある参考書。
院試活では、海外の書籍は原文で読むようにすすめています。
しかし、この「ベクトル解析 工学基礎演習シリーズ2」については訳書で読んでもいいでしょう。
というのも、演習問題の解答も日本語訳では全て掲載されているからです。
海外の書籍の場合、通常演習問題は講義中に解説を行うことが多く、解答が参考書内に掲載されていることが少ないのです。
しかし、自分で学習するときに、解いた問題があっているかどうかが分からないのは不便です。
そのため、解説がついている日本語訳をおすすめしています。
演習問題だけでなく、テキストとしてもおすすめできます。
ベクトル解析の書籍は、ともすればテクニックの解説になりがちでどうやって応用に使うのかはあまり書かれていないことが多いです。
しかし、この「ベクトル解析 工学基礎演習シリーズ2」の後半では、力学、電磁気学、流体力学などを、ベクトル解析を道具としてどのように使うかについて幅広く記載されています。
さらに途中式についても説明が省略せずに書かれているので、フォローしやすい内容になっています。
目次
- ベクトル代数
- 直交座標系とベクトル
- ベクトルの微分法
- ベクトルの積分法
- 直交曲線座標
- 幾何学への応用
- 力学への応用
- 流体力学への応用
- 電磁気理論への応用
- 微分形式