物理現象を見るときには、瞬間の部分を捉える部分と、全体を見渡す部分の二つの見方があります。
例えば、高校物理に出てくる、「力積」。
この説明をするときに、テニスのラケットや野球のバットでボールを打つ絵が紹介されていることがあります。
このときの、テニスのラケットや野球のバットにボールが当たった瞬間のボールは、へこんで書かれていますが、本当にこんな風にへこんでいるかどうか実際の写真でみたことありますか?
物理に出てくる数式は、あるモデルを式で表したものです。
そのモデルを式だけでなく、現象として理解する力を養うためには、やはり実際の物理現象を見るのが一番です。
ここでは、ある現象の「しゅんかん」を捉えた本について紹介しますね。
物理の数式はすごくシンプルだけど・・・
先ほど、紹介した「力積」を\({\bf\it F}\) は力積、\( \Delta {\it t} \) は時間を使って式で表すと、
\[ {\bf\it F} \Delta {\it t} \]
となります。
例えば、バスケットボールが床に当たった瞬間に跳ね返っていきますが、床に当たった瞬間は、ボールはつぶれています。
ボールがつぶれて、跳ね返っていき、ボールが元の形に戻るまでのボールの状態は、ものすごい変化をします。
ボールの形が変わるぐらいなのですから!
でも力積の式には、そんなボールの変化を表す項は一切含まれていません。
これで、ボールが跳ね返る部分について説明できちゃうのですから、すごいことです。
だからといって、暗記して、考えなくてもいいやで終わってしまうのは、ちょっともったいないなと思います。
この例は、すでにわかっていることの話をいたしました。
けれども、研究の世界ではまだわかっていないことをあれこれ想像して理論を立てたり、実験で調べたり、シミュレーションをしたりします。
実際に出てくるデータや実験結果から、頭の中でイメージを作る必要がでてきます。
研究って暗記じゃないんです。
早い人では大学生の後半から、遅くても大学院生になったすぐに研究生活が始まります。
研究生活で必要なのは、数式の暗記よりもむしろその数式が物語っている物理現象をイメージできるかどうかが大切になります。
しかし、物理現象は瞬間で見ないと、わからないような現象もたくさんあります。
例えば、線香花火の「パチパチ」部分。
これも長年の謎だったのですが、近年ようやくその謎が解明されました。
実は枝のように見えていたのは、残像だったのです。
高速度カメラを使って、初めて解明することができたのです。
もし君が物理系や工学系の研究を行うのであれば、物理現象が起こる瞬間の状態を一度、写真で見ていると、数式を見たときのイメージがわきやすいかと思います。
おすすめの参考書
今回紹介するのは、2019年の小学生3.4年生向け課題図書です。
文章は小学生向けに書かれていますが、そこに出てくる物理現象は日常生活にある物理現象を高速カメラで撮ったものです。
例えば、風船が割れるときってどのように割れるのかわかりますか?
あまりに速いスピードで変化するので人間の目で追うことはできません。
通常は、破裂した瞬間に出る音と、破裂した後に残るゴムのみがわかるだけです。
でも、この本には、風船が割れ始めてから割れ終わるまでの瞬間のカットが載っています。
どんな風に割れていくのかはこの「そうだったのか! しゅんかん図鑑」に掲載されています。
ほかにもろうそくの火が消えるときや、沸騰の泡、蚊取線香の煙、水がこぼれる瞬間など、21点が掲載されています。
小学生向けの本ですが、大学生の君がこの写真を見ても、きっと驚きがあることでしょう。
院試対策とは全く関係ありませんが、大学院に入って何かを研究したいと思うのでしたら、物理現象の瞬間をみることのできる「そうだったのか! しゅんかん図鑑」で、物理現象のイメージを養ってみてもいいかと思います。