最近は民間の出資でロケットの打ち上げに挑戦しているという話題もあり、にわかにロケットの関心が高まっています。
大学の同好会でもロケットを製作したりといった動きも活発になってきています。
従来ロケットは国策に寄るところが大きかったのですが、徐々に民間へと移行が進んでいます。
もしかしたら、ロケットに興味があって大学に進学したという人もいるのではないでしょうか?
実際のロケットの研究では、高等数学を始めとした多くの専門知識が必要であるのに加え、ハードウェアの製作だけでなく、ソフトウェアの開発という技術も必要になり、ロケットの専門書となると各々の分野について述べているものでした。
しかし、ロケットは本体の製作だけでなくソフトウェアもうまく動いて初めて打ち上がるのです。
しかも各々がうまくいっても、全体でうまくいってなかったらロケットはうまく打ち上がりません。
ロケットのはなしとはちょっと違いますが、小惑星イトカワに向かってなんとか帰還した科学衛星(工学実験機)「はやぶさ」にこんな例があります。
はやぶさが小惑星イトカワの岩石採取を行うために、弾丸を発射させようとプログラムが動きましたが、実際には弾丸が発射されませんでした。
これは後の調査で、発射する前に、発射回路に発射しない側に戻すという指令が紛れ込んでいたことが原因でした。
これは個々のプログラムは問題なかったのですが、データの受け渡しでうまくいっていないために発生したミスです。
このように実際のロケットはちょっとのミスでうまくいかなくなるものなのです。
研究となると、ロケットのある部分を手がけることになりますが、個々がよくても全体でうまくいかないということもあるので、ロケットの概要を知っている必要があります。
ここでは、ロケット工学について学習できる書籍を紹介します。
ロケット概要を知るために適した書籍
この本は、入門書として大学1,2年の講義用テキストや参考書としてロケット全般について理解できるようやさしく解説している本です。
ロケット本体については、ロケットの推進、液体ロケット、固体ロケット、ロケットの構造と材料、分離構造といったことが書かれています。
さらにロケットの飛行と誘導制御、打ち上げ時の運用、ロケットの軌道の概要についても記載されています。
難しい数式は一切なく、あくまで全体を理解できるように配慮されています。
先にも述べましたが、個々でうまく動作したから大丈夫だろうと思っていても、組み合わせてみたらうまく動作しないことだってあるのです。
やさしく書かれていますが、ロケットというものはどういうものかを理解するためにも、全体の概要が書かれているテキストで学習することが大切なのです。
ロケット工学の基本を学ぶのに適した書籍
この本は大学生向けのロケット工学の講義用テキストを目的として書かれています。
内容は基幹サブシステム技術についての記述がメインになっています。
システム関連の項目がないため、ロケットというものはどういうものかの見通しがよくなっています。
また、一通りのロケットの説明が文章や図表、数式で説明されています。
ロケットの打ち上げは、化学推進による垂直打ち上げ方式、多段、使い捨て型の打ち上げロケットに対象を限定しています。
近年、打ち上げロケットのコスト削減を図るため、複数回利用可能なロケットの開発が進んでいますが、日本での実用化はまだ立っていません。
そのため、基本的な概念はこの書籍で学習することが可能です。
基準となるロケットは、H-IIとなっています。
目次は以下の通りです。
- 打ち上げロケットとはなにか
- 物理・数学的準備
- ノズルの理論
- 固体ロケット推進システム
- 液体ロケット推進システム
- ロケットの運動の基礎
- ロケットの航法
- ロケットの誘導と最適化
- ロケットの姿勢制御
- ロケットの構造
- ロケットの電気・電子システム
補完のテキストとしてコロナ社の宇宙工学シリーズ2「ロケット工学」もありますが、残念ながら絶版になっています。
基本的な内容は
H2ロケットについては、コロナ社の「ロケット工学」のみに記載されています。
H2ロケットは年々改良されていますので、書籍に掲載されているモデルは旧型になっていますが、かつてのロケットがどのような構造をしていたのかを知るにはいい例です。
コロナ社の「ロケット工学」の目次も載せておきます。
- ロケットの歴史
- ロケットの原理と飛行原理
- 宇宙機の軌道
- ロケット推進の基礎理論
- 推進システム
- 推進剤
- 空気力学
- 機体構造・材料
- アビオニクスシステム
- H-IIロケット
- 将来の宇宙輸送技術
ロケット・人工衛星・運用・ミッションの概要を学ぶのに適した書籍
図説宇宙工学は、ロケットからミッション、人工衛星等設計、追跡管制等、ミッションのスタートからロケットの打ち上げ、運用に至るまでの内容が書かれています。
やや古いのですが、具体例が豊富に掲載されているので、イメージしやすいのではないかと思います。
宇宙工学は日々進歩していますので、書籍の情報は、最新の技術では使われていないような内容になっていることもあります。
とはいえ、最新の技術は昔の技術の改良や失敗から生まれたものです。
昔の技術の概要を知っていると、今の技術のいい面がより見えてくることでしょう。
ロケットは、ミッションに合わせてカスタマイズされています。
ミッション全般で必要なことは何かについて、見渡すには適した書籍です。
全般について学習した後、最新の技術を論文や報告書で学ぶことで、補完できるかと思います。