人工衛星

宇宙機の熱設計は、非常に重要なものとなります。

なぜならば、宇宙機は一度飛ばすと、修理するのが非常に難しいからです。

それにもかかわらず、ミッション期間中、できる限り長く電子機器を作動させる必要があります。

一般的に電子機器は、作動温度が高温になると寿命が短くなります。

しかし、作動温度が低温になると、今度はバッテリーの寿命が短くなります。

すなわち、宇宙機では、ミッション終了まで各機器の温度を所定の温度範囲内に保つことが必須条件なのです。

ここでは、宇宙機の熱設計に関する参考書を紹介します。

 

宇宙機の熱設計で必要なことは?

宇宙機の熱設計で一番厄介なのは、地上で実験するのが難しいということです。

なぜならば、宇宙空間では、地上に比べたら同じ体積内にごくわずかな分子しか存在しない環境です。

加えて、宇宙空間では重力はほとんど感じられません。

そのため、地上と同じように考え、実験することが難しいのです。

 

宇宙機の熱設計で知らなければならないことは、

 

  • 宇宙機の役割と構成
  • 搭載機器の性質
  • 宇宙機の軌道

 

です。

ミッションによって、温度の許容範囲が異なってきます。

例えば、水星に向かう宇宙機と木星に向かう宇宙機では、太陽からの放射の量がまるで違います。

また、観測ミッションの違いにより搭載する機器も変わってくるため、それぞれの機器の適正温度がことなってきます。

 

そのため、まずは宇宙機に関する概要を知る必要があります。

 

次に宇宙での熱の伝わり方や熱制御技術といった熱に関する基礎知識が必要になってきます。

宇宙機のミッションによって求められる温度が変わってきますので、熱設計は、熱制御のみならず、宇宙機そのものやミッション、軌道についても理解しておく必要があるのです。

 

宇宙機の熱設計の参考書

熱設計に関する書籍はいくつかありますが、その中で宇宙機の熱設計に関してバランスよく書かれているのが、名古屋大学出版会から出版されている「宇宙機の熱設計」です。

基礎理論から実践的な事例まで幅広く掲載されているのが特徴です。

要点がまとまっていて、概要をつかみたいという場合もおすすめです。

ただ、高度な内容も含まれているため、詳細については各論文や章末にある参考文献にあたるといいでしょう。

 

目次

  1. 宇宙機の熱設計とは
  2. 熱環境と宇宙環境
  3. 宇宙における伝熱現象
  4. 熱制御技術の基礎
  5. 熱設計の解析と進め方
  6. 熱真空試験と熱設計の検証
  7. 熱物性の測定技術と推算
  8. 宇宙環境における劣化とその評価
  9. 熱制御技術の展開
  10. 熱設計の実際例
  11. 熱設計に関わる注意事項と今後の課題