院試で熱力学が出題されたとしても、テキストに書かれているような内容が出題されることが多いです。
しかし、なぜそのような基本問題が出題されるかを考えると、その基本問題を理解していることが大学院に入ってから重要であるということを、暗に意味していると考えられます。
院試だけを考えれば、基本的なレベルのテキストをマスターすれば十分です。
ただ、熱力学の重要性がわからいまま学習しているのは、モチベーションが下がる原因になります。
そこで今回は、宇宙に関する熱力学が書かれているテキストを紹介します。
今勉強している内容が宇宙に関係しているということがわかれば、宇宙論やブラックホールを大学院で学ぶ君にとっては、いい刺激になるかと思います。
もちろん、宇宙論は学ばないけれども、熱力学の応用の一つがどのように使われるかを知るには、いい教材だと思います。
院試とは直結しませんが、大学で学ぶ熱力学がどのように応用されていくかを知ることで、今学習している内容にどのような意味があるかを知るための書籍を紹介します。ます。
熱の理論:お熱いのはお好き
今回紹介するテキストは、熱力学の基礎から宇宙への応用までを解説しています。
もともと熱力学は経験則を前提にして組み立てているため、数学的に厳密に理論を展開していく必要があります。
「熱の理論:お熱いのはお好き」は、第1章で熱力学第1法則のみから数学的に得られる全ての結果について解説しています。
院試に対応するため、最終的には数学的に得られる結果が自分で導き出せるようになってほしいのですが、第1章では具体例が用いられていないため、初学者がこのテキストで熱力学を学ぶにはやや厳しいかもしれません。
一通りの熱力学を学んだ後、「熱の理論:お熱いのはお好き」を学習すると、今までのテキストとは違った視点が見えてくることでしょう。
目次
- 熱力学第1法則
- 理想気体,ファン・デル・ワールス気体,光子気体
- エントロピー
- 熱力学関数
- 熱力学第2法則
- 開いた系
- 熱力学第3法則
- 統計力学
- 光子気体
- 相対論的熱力学
- 膨張する宇宙
- ブラックホールの熱力学
熱力学の応用として解説されている章は第10章からになります。
相対論的熱力学については、いくつかの大学で大学の先生が作成した講義テキストにはその項目が存在しますが、テキストとして収録されているものは、ほとんどみかけません。
テキスト化されたという点でも貴重な章です。
また、第12章ではブラックホールの熱力学について触れていて、ホーキング輻射やウンルー輻射、ブラウンーヨークエネルギー、荷電ブラックホールなどについて述べています。
近年、ブラックホールを直接観測しようという動きが広まっており、注目が集まりつつあります。
ブラックホールというものがどのようなものかを理解するためにも、第12章のブラックホールの熱力学に出てくる項目ははずせません。