「はやぶさ2」、リュウグウに到着!
2018年6月27日。日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」から距離20kmの距離に到着しました。
これからここをベース拠点にして、さまざまな探査を行う予定でいます。
お兄さんの「はやぶさ」は小惑星「イトカワ」に到着する前からトラブル続きでした。
しかし、「はやぶさ2」はここまで順調に飛行しました。
かつての(工学試験衛星を含む)惑星探査機では、到着するまでに何らかのトラブルが発生していました。
「はやぶさ2」の設計や運用では、過去のトラブルや失敗から学んだのです。
探査機を打ち上げる機会がなかなか巡ってこない日本であるにもかかわらず、世界と張り合える数少ない分野なのです。
航空宇宙って「探査機(宇宙機)」をやる分野なの?
探査機の設計や運用、そして探査機を打ち上げるときに使われるロケットは「航空宇宙」の分野に属しています。
そのため、「航空宇宙 = 探査機、ロケット」だと思っている人もいるかもしれません。
これはは、半分正解で半分不正解なのです。
航空宇宙分野は、大きく分けて二つの分野が含まれています。
- 空気中を飛行する飛行機
- ロケットや探査機(宇宙機)
前者は航空工学、後者は宇宙工学になります。
これらを合わせて航空宇宙分野と言います。
航空工学と宇宙工学はどう違うの?
空気中を飛行する場合と宇宙空間を飛行する際には環境が違いますので、機体のエンジンや設計方法は異なります。
宇宙空間では空気がありませんので、風を発生させて前方に進むという仕組みは使えません。
別の方法で前方に進む方法を作らなくてはなりません。
また、酸素もありませんので、酸素を自前で持って行かない限り、酸素を燃焼させて噴射させる方法は使えません。
ところが、ロケットの打ち上げ能力の問題から、燃焼させるための酸素を宇宙空間に持って行くのは難しいのです。
別の方法で噴射させる必要があるのです。
また地上付近にある飛行機とは違い、特に惑星探査機は非常に遠方にあります。
そのため、通信方法も地上付近の時とは別の方法で確立する必要があるのです。
このように航空工学と宇宙工学では環境が異なることにより、設計、機体構造、エンジン、通信手段等が全く異なります。
全く別の分野ですが、一つだけ共通点があります。
それは、ロケットは空気のある地上から打ち上げるということです。
すなわち、スタートにおいては空気抵抗を考慮する必要があるということです。
空気中を移動するときにどのような機体ならば空気抵抗が減らせるかなどの経験は航空機分野の考え方が活用できるのです。
専門分野になると航空工学と宇宙工学は別々の研究になるかもしれませんが、情報が全く使えないのかというとそうでもなく、使える部分もあるのです。
そのため、例えロケットを専門分野に選んだとしても航空機のことはある程度知っていると参考になるのです。
おすすめのテキスト
航空工学と宇宙工学のテキストは、通常別々の書籍として書かれてます。
これは先生の専門が航空工学をメインにしているのか、宇宙工学をメインにしているのかで分かれてしまっていることが原因です。
そのため、航空宇宙全般を学ぶ際には、航空工学の概要テキストと宇宙工学の概要テキストをそれぞれ読む必要がありました。
しかし、2018年に航空工学と宇宙工学の概要を1冊まとめた書籍が販売されました。
それが「航空宇宙学への招待」という書籍です。
「航空宇宙学への招待」 の書籍は、東海大学の航空宇宙が科の教員が中心となってそれぞれの専門分野について執筆し、それらをまとめた書籍です。
自然界で飛んでいる生物や人類と宇宙の関わりとの歴史から始まり、航空機について、宇宙機についての概要がまとめられています。
この1冊で航空宇宙で学習する範囲の概要をみることができます。
もし航空宇宙の勉強を始めようと考えている君や、探査機の概要やそこで使われている技術について知りたいときには、「航空宇宙学への招待」で学習するとよいでしょう。